奪取―[Berry's版]
 パソコン画面との睨みあいを続けていた喜多の目に、メール着信のコメントが飛び込んでくる。片眉を上げ、思い当たる差出人を数名思い浮かべながら、喜多は届いたばかりのメールを開く。そこには、予想外の人物の名が表示されていた。

 ※※※※※※

 カードを差込み、小さな機械音と共に開錠したドアを開け、喜多は身体を滑り込ませる。既に我が家のように、慣れ親しんだ一室。喜多が勤務する会社の系列にあたるホテルのセミスイートだ。個人的に、年間契約を交わし確保している部屋である。スタッフはもちろん、セキュリティーに関しても十分に熟知し、優れた環境であることは保障済みである。
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