奪取―[Berry's版]
 ゆえに、今回のストーカーの件も、喜多が春花の所属事務所の人間と連絡を取り合ってきていた。もちろん、情報を聞き出すために数回、本人と会ったことはある。だがそれは、解決に向けて必要な過程であったからである。直接、春花から連絡を受けたことは調査期間中、一度もなかったのだ。
 数回、春花本人と会い、言葉を交わし、テレビや雑誌などの媒体からは得られないオーラを、喜多は彼女から感じていた。多くの人間が、彼女に魅了され、心を奪われてしまう理由が、多少なりとも分かる気もしたのだ。選ばれた人間であると。大きな眸は確かに魅力的でもあり、整った顔立ちをしていることも否定は出来ない。だが、そんな表面上のお飾りの問題ではないのだ。
 ――身に纏っているものが違う。随分と陳腐な言葉ではあるが、喜多にはそうとしか表現できる言葉が思いつかなかった。
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