奪取―[Berry's版]
 そんな彼女から、喜多は会いたいと電話を受け取った。個人的にお礼がしたいからと。
 正直、興味をそそられた。明らかに意図のある誘い、その理由が知りたかった。
 喜多は承諾の言葉を春花へ返した。

 春花が指定したレストランは、喜多が思わずなるほどと感じる作りになっていた。ごく限られた照明だけが点され、会話の邪魔にならない程度の落ち着いた音楽が流れる店内。全てが個室仕様になっており、客同士の顔が見られることはない。案内された椅子に座り、喜多は春花と向かい合っていた。
 なんの駆け引きもなく、春花は自身の手札を喜多に晒してきた。

< 119 / 253 >

この作品をシェア

pagetop