奪取―[Berry's版]
「貴方に求めていることは、身体の関係だけじゃないわ。勘違いしないで。手段として、互いの身体を求めると言うのなら問題はないけれど。その場限りでも構わない。私の望みどおり焦がしてくれるなら、貴方の心だって私は求めるし、私の心も貴方に受け止めて欲しいもの」
「でも、歩み寄る甘い関係を求めているわけではないと」
「そこは、お互い大人でしょう」

 目の高さまで、春花がグラスを掲げ首を傾げる。僅かな逡巡ののち、喜多は自身のグラスを、春花のそれと重ね合わせたのだった。小さな音と共に。

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