奪取―[Berry's版]
朝、互いに時間の余裕があるときは、喜多が絹江のコーディネートを見立てることもある。大人しく、それに袖を通す時。絹江はふと思ってしまう。自分は、いったいどんな存在なのか。だが、今のところ。それには気付かぬふりをして、目を瞑っている。いや、あえて触れないようにしているのだ。
テーブルに乗せた朝食を、ふたりは向かい合い口に運ぶ。見慣れた光景になりつつある中で、喜多が小さな音と共に鍵をひとつ、テーブルに載せた。
絹江は首を傾げ問う。
「従兄弟が仕事から完全に手を引いたことで、俺に回ってくる雑務が増えたんだ。もしかすると、会社に泊り込むことになるか……帰宅できたとしても夜中になるかもしれない。だから、これ。きぬちゃんに渡しておくよ」
テーブルに乗せた朝食を、ふたりは向かい合い口に運ぶ。見慣れた光景になりつつある中で、喜多が小さな音と共に鍵をひとつ、テーブルに載せた。
絹江は首を傾げ問う。
「従兄弟が仕事から完全に手を引いたことで、俺に回ってくる雑務が増えたんだ。もしかすると、会社に泊り込むことになるか……帰宅できたとしても夜中になるかもしれない。だから、これ。きぬちゃんに渡しておくよ」