奪取―[Berry's版]
14.期待
いつもより、少しだけ高く積み上げられている書類を視界の片隅で捉えながら、喜多は小さく息を吐いた。首をぐるりと一回りさせると、骨の関節の鳴る音が響く。いつからか、凝り固まりすぎた肩は痛みすら感じなくなってきていた。一連の流れのように、続けて右手の腕時計に視線を移せば、短針が予定していた数字を指そうとしている。
現在、喜多の元には、決済を求める書類が多く集まる。指示を出すことはあるものの、喜多自らが先頭を切りチームを起こし、企画を進めてゆくことは非常に少ない立場になっていた。だからと言って、仕事量が減ったわけではない。問題が起きる前に、行き詰まる前に。それらを回避し事を運ぶ。以前よりも、広い視野と先見の明が求められる立場にあるとも言える。
現在、喜多の元には、決済を求める書類が多く集まる。指示を出すことはあるものの、喜多自らが先頭を切りチームを起こし、企画を進めてゆくことは非常に少ない立場になっていた。だからと言って、仕事量が減ったわけではない。問題が起きる前に、行き詰まる前に。それらを回避し事を運ぶ。以前よりも、広い視野と先見の明が求められる立場にあるとも言える。