奪取―[Berry's版]
15.充電
午後の生徒等を見送った絹江は、ひとり控え室にて休憩を取っていた。夜間の授業までは幾分か、時間的余裕があるからだ。折り畳みの椅子に腰を下ろし、設けられている小さなロッカーから、自身の鞄を取り出す。ポケットに納まったそれを探って、手にした絹江は見つめていた。アクセサリーも、何も付いていない、シンプルなひとつの鍵。ひんやりと冷たいそれを、掌で転がし、もてあぞぶ。
あの日から。既に、一週間が経過していた。喜多から渡されたこの鍵を、絹江は一度も使ってはいない。使う理由が見つからないからだ。正直、喜多のことは気掛かりではある。絹江自身も、それは認めてはいる。けれど……。
あの日から。既に、一週間が経過していた。喜多から渡されたこの鍵を、絹江は一度も使ってはいない。使う理由が見つからないからだ。正直、喜多のことは気掛かりではある。絹江自身も、それは認めてはいる。けれど……。