奪取―[Berry's版]
ふと、喜多は思い出していた。7日前、テーブルに乗せた鍵を見た絹江の顔を。迷惑とまではっきりしたものではなかったが、困惑の色は見て取れた。本日まで、絹江がその鍵を使い、喜多の家で、彼の帰りを待っていた日がないことが、いい証拠だろう。絹江の心は、未だに閉ざされていると言うことだ。
最初に事を強引に進め、退路を断った自覚は、喜多にある。長期戦は覚悟の上であった。
べとりと付きまとい囲っているだけでは、絹江に負担がかかる。だが、無意味に間を空けても、絹江の心が迷走するだけだろう。自身で招いた事態であることを棚に上げ、喜多は難しい距離感を思い、頭を抱えるように両手で髪をかき上げていた。
とりあえず、春花から受けた件が落ち着きを見せた頃。一度、業務の調整について箕浪と相談してもいいだろう。喜多はそれを頭の隅に書き留めたのだった。
最初に事を強引に進め、退路を断った自覚は、喜多にある。長期戦は覚悟の上であった。
べとりと付きまとい囲っているだけでは、絹江に負担がかかる。だが、無意味に間を空けても、絹江の心が迷走するだけだろう。自身で招いた事態であることを棚に上げ、喜多は難しい距離感を思い、頭を抱えるように両手で髪をかき上げていた。
とりあえず、春花から受けた件が落ち着きを見せた頃。一度、業務の調整について箕浪と相談してもいいだろう。喜多はそれを頭の隅に書き留めたのだった。