奪取―[Berry's版]
絹江の質問に、喜多は顔を綻ばせた。それはそれは嬉しそうに、だ。
「そいつは良い相手を見つけてね、やっと落ち着いてきたんだ。これ以上嬉しいことないよ。良い機会だし、惚気話に羨んでばかりもいられないから、俺も相手を見つけようと思ってね。両親に見合い話を見繕ってもらったんだ」
「そうだったの。でも、せっかく決心したお見合い相手が私だったなんて。ごめんなさいね」
「なんだよ、それ」
ふたりは、眸を合わせ声を上げ笑った。呼吸が落ち着いた頃に、絹江は本音を零していた。口にするつもりはなかった言葉を。
「私は安心した。喜多くんが相手で。私から断る理由を考えなくてもいいんだもの」
「理由?」
「そう。お見合いの席に来ていてなんだけれど。私、結婚する気はないの」
「そいつは良い相手を見つけてね、やっと落ち着いてきたんだ。これ以上嬉しいことないよ。良い機会だし、惚気話に羨んでばかりもいられないから、俺も相手を見つけようと思ってね。両親に見合い話を見繕ってもらったんだ」
「そうだったの。でも、せっかく決心したお見合い相手が私だったなんて。ごめんなさいね」
「なんだよ、それ」
ふたりは、眸を合わせ声を上げ笑った。呼吸が落ち着いた頃に、絹江は本音を零していた。口にするつもりはなかった言葉を。
「私は安心した。喜多くんが相手で。私から断る理由を考えなくてもいいんだもの」
「理由?」
「そう。お見合いの席に来ていてなんだけれど。私、結婚する気はないの」