奪取―[Berry's版]
16.転換
 数分前。喜多から手渡した書類の束が、乱暴にテーブルへ投げ出される。失礼な態度であるが、予想できた行動でもあった。誰の視線も気にすることのない、個室と言うスペース故の行動だ。喜多は動揺することもなく、カップに手を伸ばした。
 喜多の態度が更に神経を逆撫でるのだろう。喜多と向かい合い座る春花は、指でテーブルを叩き鳴らす。
 ふたりは、先日訪れたレストランへ再び来ていた。本日は、受けた依頼の中間報告だ。堪りかねたように、春花が重い口を開く。

「喜多。これが報告書?貴方達、腕が落ちたんじゃないの?」
「……これは失礼な」
「この内容じゃ、納得できるわけないでしょう?……私が求めた結論が見えないわ」
< 181 / 253 >

この作品をシェア

pagetop