奪取―[Berry's版]
 正式な依頼であれば。更には、喜多たちの仕事を評価し、信頼した上での依頼であるならば。例え、それが春花からの依頼であったとしても、断るわけにはいかなかった。
 そして、得た報告書を本日渡したのである、が……。
 喜多たちが掴んだ事実――彼が周囲に何かしらの相談をしていることは事実のようである。だが、それが移籍や独立についてなのか。確固たる裏づけを元とした真偽は、テーブルに散らばる報告書に明記されていない。
 春花には、それが不満なのだ。

「今回は、特殊な業界のことだ。人の目も多い上に、制限も多い。難しい件なんだよ。まあ、結局は。春花が問いただしたほうが良いってことだろうな」
「直球勝負が出来るなら、探偵になんて頼まないわよ。まったく」

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