奪取―[Berry's版]
カタリと。喜多が手にしていたカップをソーサーへ戻した際に、意外にも大きな音を立てた。その反動で、少しだけテーブルに零れてしまった紅茶を、絹江は慌てて拭う。常に落ち着きある喜多らしくない行動に、首を傾げながら。
固い表情を浮かべ、喜多は絹江の言葉を繰り返す。
「結婚する気はない?」
「ええ、そうよ」
「もしかして、付き合ってる人がいる?」
「そんな人いないわよ。でも。結婚する気はないの」
「理由を聞いても?」
喜多の質問に、絹江は一瞬言い淀む。相手が初対面ではないものの、久しぶりに再会した知人だ。「セックスをしたくないので、結婚は考えられません」などとは、簡単に言えることではない。大学時代、絹江が先輩と交際・破局したことを喜多も知っているが。原因を話したことはなかった。
固い表情を浮かべ、喜多は絹江の言葉を繰り返す。
「結婚する気はない?」
「ええ、そうよ」
「もしかして、付き合ってる人がいる?」
「そんな人いないわよ。でも。結婚する気はないの」
「理由を聞いても?」
喜多の質問に、絹江は一瞬言い淀む。相手が初対面ではないものの、久しぶりに再会した知人だ。「セックスをしたくないので、結婚は考えられません」などとは、簡単に言えることではない。大学時代、絹江が先輩と交際・破局したことを喜多も知っているが。原因を話したことはなかった。