奪取―[Berry's版]
「ごめんなさい、その日は先約があるの」
「そっか、残念」

 ――俺に付き合ってよ。気分転換。
 一体何に、どこへ付きあわされるのか。絹江には、将治が何を考えているのか、全く予想が出来なかった。ただ、うっかりを装い、素知らぬ顔で忘れてしまった場合。後々どんな目に合わされるかわからない。……それだけは、今の絹江にも予想が出来た。
 一時の辛抱である。今回に限っては、彼に大人しく従っておこうと絹江は決めていた。
 最後の一枚を手にした絹江に、一度落胆を見せたはずの喜多が言葉を続ける。

「じゃあさ」

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