奪取―[Berry's版]
 同時に。絹江の腹部を回っていた喜多の手が、怪しく動き始めていた。太腿を撫でる掌を訝しく思い、絹江は身体を捻り喜多の顔を睨む。
 待ち構えていたように。絹江の唇と喜多のそれが僅かに重なる。小さなリップ音の後、距離を取り現れた喜多の眸は、怪しい色を浮かべていた。それを視界に捉えた絹江は、瞬時に危機を感じ慌てて身体を引く。
 だが、既に遅い。
 意図も簡単に。次の瞬間には、喜多が絹江を抱き上げていた。小さな悲鳴と共に。絹江の手にあった長襦袢が、するりと逃れ床へ着地する。途中まで解かれた半襟も道連れだ。抱き上げられたことで感じる浮遊感に、未だ慣れない絹江は反射的に喜多の首へ腕を回していた。

「何!?喜多くん」
「……一緒に、風呂へ入ろうか」

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