奪取―[Berry's版]
喜多の言葉に、絹江は目を剥く。
 瞬時に思うのは「ありえない」だ。何度も喜多とは身体を重ねた。素肌を晒し、恥ずかしがる間柄でも、歳でもないことは自覚している。だが、風呂となれば、別問題だ。もちろん。大学時代に付き合っていた彼氏とも、経験はない。情事の後、シャワーへ向かう絹江に、喜多がふざけて「一緒にどうか?」と問いかけてきたことはあっても。絹江が眉間に皺を寄せれば、喜多が無理強いすることはなかった。今までは。
 絹江の顔とは反対に、喜多の表情は非常に楽しげだ。抱えられたまま、絹江は必死で手足をばたつかせる。
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