奪取―[Berry's版]
 いつかと違い、今の絹江は着物を着ていない。楽に身体を動かせるワンピースを着用している。振り子のように手足を動かし続ける絹江を抱きかかえるのは、至極大変なことだろうに。喜多は気にすることも、絹江を危うく落としそうになるこもなく。軽い足取りで、浴室を目指し足を進めた。

「ちょっと、喜多くん!嫌だって」
「大丈夫、大丈夫」
「何も大丈夫じゃなあーい!」

 浴室へと続くドアが閉まると同時に。絹江の悲鳴が響いていた部屋が、静寂を取り戻したのだった。

 喜多の手によって、押し込めれた浴室は、照明が落とされていた。
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