奪取―[Berry's版]
18.背中
 次々と、着飾った客が到着し、吹き抜けのロビーを彩ってゆく。その様を、2階のとある場所から見下ろしている喜多の口元は、満足げに緩んでいた。
 本日まで、喜多が進めてきた――従兄弟である箕浪から引継ぎを受けた――プロジェクトがこの日、集大成を迎えようとしていた。
 喜多が所属する企業では現在、駅前にある集合商業施設の開発に全力で取り組んでいる。その一環として、隣接しているとあるホテルとの提携も組んでいた。それはのちに、駅・集合商業施設・ホテルをひと繋ぎとした、地元客のみならず旅行客をもターゲットとする大規模な集客計画を掲げているからである。計画の中心となる集合商業施設のオープンには、まだまだ時間がかかる。しかし、一足早く。ホテルのリニューアルオープンを迎えようとしていた。
 そのセレモニーが、今日行われるのであった。
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