奪取―[Berry's版]
頬を緩め、絹江は承諾する。絹江の笑みを前に、喜多も安堵の息を吐いた。
「両親は大層喜んでいたんだよ。絹江さんとのお見合い話を」
「覚えてて下さっているのね。嬉しいわ」
「絹江さんのことを随分気に入っていたから。俺の両親は。『旅に出ます』なんて内容の手紙が送られてきた後、突然連絡が途絶えた時は心配もしていたんだよ」
「ずっと考えてはいたことだったのよ。卒業後も全国を回ってみたいって。気の向くままに。若いうちに見れるだけ、触れ合えるだけと思って。幸い、着付けの資格は持っていたから、その地その地で教室や生徒さんを見つけてね。で、30歳を機に、地元へ戻ってきたわけ」
「じゃあ、当分はここで腰を据えて?」
「うん、そう思ってる」
「そうか、良かった」
「両親は大層喜んでいたんだよ。絹江さんとのお見合い話を」
「覚えてて下さっているのね。嬉しいわ」
「絹江さんのことを随分気に入っていたから。俺の両親は。『旅に出ます』なんて内容の手紙が送られてきた後、突然連絡が途絶えた時は心配もしていたんだよ」
「ずっと考えてはいたことだったのよ。卒業後も全国を回ってみたいって。気の向くままに。若いうちに見れるだけ、触れ合えるだけと思って。幸い、着付けの資格は持っていたから、その地その地で教室や生徒さんを見つけてね。で、30歳を機に、地元へ戻ってきたわけ」
「じゃあ、当分はここで腰を据えて?」
「うん、そう思ってる」
「そうか、良かった」