奪取―[Berry's版]
 だが、明日は久しぶりの終日オフ日。先日の浴室での甘い時間も、本日の願望が挫かれてしまった代償としては、満足できなくとも仕方ないと思えるほどの充電にはなっていた。
 今更……と、喜多は諦めの悪い自分を笑いながら、秘書と共にエレベータへと足を進めた。

 ※※※※※※

「いや、そんな……私、恥ずかしいです」
「大丈夫、すごく綺麗ですよ。肌もお手入れが行き届いてて」
「でも……っあ」
「口を少し開けて」

「……あのさ、その会話。どうにかならない?」

 言葉だけ聞いていると怪しいから。と言った将治は、眸を細め、鏡に映る絹江の姿を背後から眺めていた。
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