奪取―［Berry's版］

　移動中、将治へ何度質問をぶつけても、絹江が満足するような答えを貰うことは出来ず。絹江は若干混乱と俄かな諦めを感じたままに部屋へ足を踏み入れたのだった。
　そして、目にした光景に酷く驚くことになる。

「さ、出来上がりです」

　ケープを取り除かれ、絹江は立ち上がり全身を鏡に映す。身体を左右に捻り、更に困惑の色を浮かべた。背後から、将治が近寄り覗き込む。

「綺麗ですよ、絹江さん」
「……将治くん、これが気分転換なの？」
「そうですよ。たまには、洋服に袖を通して、とびきりのお洒落をして。知らない集団の中で頭の中を空っぽのままに雰囲気を楽しむ。気分転換には十分でしょう」