奪取―[Berry's版]
 短く息を吐き出してから、秘書が口を開く。

「あと10分で始まります、本部長」
「分かっている」

 秘書の表情から、彼が発言を最小限に留めていることが、喜多にも十分に伺えた。 私生活に起因する理由から、社会的信用を失うわけにはいかない。それだけのものを、自らが望み手に入れて、背負っているのだ。
 気持ちを切り替えるべく、固く結んだ拳を。喜多は眸を閉じ額に当てる。大きく深呼吸を繰り返してから、彼は立ち上がった。

「大丈夫だ。行こう」

 ※※※※※※

 ――それが君の答えか?

 眩いほどの照明が溢れる会場。立食形式になっているそこは、計算された配置で丸いテーブルが置かれていた。
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