奪取―[Berry's版]
 メイクによって、姿を消されてしまった跡を見つけ、喜多が再び唇を寄せた。舌を這わせ、意図的にきつく噛み付く。歯形が残るほど。零れた悲鳴に、喜多は告げる。

「隠せないほどの跡を付けることにしようか?絹江」

 絹江を追い込むために発せられた言葉であるにも拘らず、喜多の声は震えていた。自身の方が傷つき、痛みを堪えているかのように。
 睫毛が触れそうなほど近くにある喜多の頬を、絹江は両手で包んだ。揺れる喜多の眸を覗き込んで。

「喜多くん、怒ってるの?」

 答えようとしない喜多に、絹江は言葉を続ける。

「将治くんとはただの友達よ。今日も、喜多くんがここにいるって私、知らなくて……」
「――違う、違うんだ」

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