奪取―［Berry's版］

　握られていた手を引き抜き、絹江はその手を喜多の頬へ沿わせる。一瞬、喜多が身体を震わせ反応を見せた。たが、直ぐに気持ちを立て直したのだろう、絹江の頬へ顔をすり寄せる。

「絹江を思う気持ちは、間違いようもないほどの真実だけれども。その思いは歪んでいると思う。絹江と離れていた10年以上の歳月。ただ君ひとりだけをひたすら求めていたなんて綺麗ごとは言えない。時間を掛けて、俺の胸の奥底で燻り育ってきた思いは、純粋なものだけでもない。でも、絹江。君を手に入れてしまった今、俺は……君を俺だけのものにしたくて仕方ないんだ。誰の目にも触れさせたくない。
　――俺は、どうしようもない男だ」