奪取―[Berry's版]
眸を閉じ、絹江は言葉を切った。次の言葉を、喜多は口を閉ざし待つ。絡まったままの互いの指に、先ほどよりも強い力を込めて。一度、大きな深呼吸をひとつしてから。絹江は再び言葉を紡ぎ始めた。
「私、喜多くんと一緒なら、一歩を踏み出せると思う。辛くても苦しくても。その先に、喜多くんとの未来があるのなら。私は喜多くんの手を離したくはない。きっと、喜多くんとなら、私らしく生きていける。喜多くんと一緒に、生きていきたい」
「絹江」
「待たせて、ごめんね。喜多くん」
喜多は両腕を伸ばし、絹江を抱きしめた。痛みを感じるほど強く抱きしめられながら、絹江は思う。奪われたのは、自分の未来ではなくて。きっとずっと昔、絹江が奪ってしまっていたのだろう。喜多の未来を――。
「私、喜多くんと一緒なら、一歩を踏み出せると思う。辛くても苦しくても。その先に、喜多くんとの未来があるのなら。私は喜多くんの手を離したくはない。きっと、喜多くんとなら、私らしく生きていける。喜多くんと一緒に、生きていきたい」
「絹江」
「待たせて、ごめんね。喜多くん」
喜多は両腕を伸ばし、絹江を抱きしめた。痛みを感じるほど強く抱きしめられながら、絹江は思う。奪われたのは、自分の未来ではなくて。きっとずっと昔、絹江が奪ってしまっていたのだろう。喜多の未来を――。