奪取―[Berry's版]
喜多の問いに、絹江は笑みを返す。
実は。前日まで、絹江は違うコーディネートを準備していた。しかし、今朝になって急に気が変わったのだ。久しぶりに、この白大島に袖を通してみようかと。天気も良いからだろうと、その時は納得していたのだが。今にして思えば、どこか予感めいたものがあったのかもしれない。喜多と会う予感が。
随分と昔のことにも関わらず、喜多が記憶していたことで。絹江の心は弾んでいた。無意識に、声も弾む。
「すごい、喜多くん。覚えているの?この着物」
「もちろんだよ。最初の誂えに白大島を選ぶだなんて……って周りから言われていたんだろう?その話を聞いて、両親が『あの子は着物と長い付き合いになる子だ』って言っていたのも覚えているよ」
「そんなこともを……。この大島、糊が随分取れて、すっかり柔らかくなったわ」
実は。前日まで、絹江は違うコーディネートを準備していた。しかし、今朝になって急に気が変わったのだ。久しぶりに、この白大島に袖を通してみようかと。天気も良いからだろうと、その時は納得していたのだが。今にして思えば、どこか予感めいたものがあったのかもしれない。喜多と会う予感が。
随分と昔のことにも関わらず、喜多が記憶していたことで。絹江の心は弾んでいた。無意識に、声も弾む。
「すごい、喜多くん。覚えているの?この着物」
「もちろんだよ。最初の誂えに白大島を選ぶだなんて……って周りから言われていたんだろう?その話を聞いて、両親が『あの子は着物と長い付き合いになる子だ』って言っていたのも覚えているよ」
「そんなこともを……。この大島、糊が随分取れて、すっかり柔らかくなったわ」