奪取―[Berry's版]
喜多が呼ぶ、懐かしい響きに。絹江の心臓が一度、大きく跳ねた。二十歳前後だった当時よりも、甘く深さを増したように感じるのは。互いに年を重ね大人になった証拠だろうか。少しだけ、熱を帯びたように思える頬を誤魔化すように、絹江は頬に手を当て、頷くだけの返事をする。
気に留める様子のない喜多を前に、絹江はひとり安堵のため息を零していた。
「しかし、タイミングが合って良かった。勤務先は聞いていたから、もしかしたら……なんて可能性を考えて足を向けたんだけれど。正解だったみたいだ」
「ホントね。喜多くんの機転で、すれ違わずにすんだものね」
気に留める様子のない喜多を前に、絹江はひとり安堵のため息を零していた。
「しかし、タイミングが合って良かった。勤務先は聞いていたから、もしかしたら……なんて可能性を考えて足を向けたんだけれど。正解だったみたいだ」
「ホントね。喜多くんの機転で、すれ違わずにすんだものね」