奪取―[Berry's版]
 食後のデザートを済ませ、紅茶を楽しんでいるときだった。喜多が何かを思い出したように、テーブルの上に荷物を乗せた。大きな紙袋から姿を現せたのは、重みのあるたとう紙だ。
 なにやら、喜多が大きな荷物を持っていたことは、絹江も気付いていた。だが、その中からたとう紙が出てくるとは思っていなかった絹江は、慌てて紅茶の残ったカップをテーブルの端に寄せる。

「何?どうしたの、突然」
「これこれ。忘れるところだった。これを渡すのが、本日の俺の任務だから」

 ふたつのたとう紙の紐を解き、現れた着物と帯を前に。絹江は息を呑む。
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