奪取―[Berry's版]
帯はクリームベージュを基礎とした品で、流麗な唐草が曲線を描いている。金糸が少し入った小さな桜が所狭しと散らばっていた。一方の着物といえば、グリーンの濃淡で描かれた大ぶりな市松模様で。開いてみなければ正確なことはいえないが、仕立て方法によっては、小紋にも付け下げにも見えるかもしれなかった。
帯を取り出し、お太鼓の形を作って。喜多は絹江の前に差し出す。
「母親が言うには、礼装用にも、普段用に使える万能な帯だって話。……まあ、俺がいちいち説明しなくとも、きぬちゃんには分かるんだろうけれど」
「……お太鼓に出した場所で、表情が随分変わるわね」
「そうそう、B面はまた全然表情が違うから、いく通りも楽しめるよ。着物の八掛けはこの色。きぬちゃん、好きだろう?」
帯を取り出し、お太鼓の形を作って。喜多は絹江の前に差し出す。
「母親が言うには、礼装用にも、普段用に使える万能な帯だって話。……まあ、俺がいちいち説明しなくとも、きぬちゃんには分かるんだろうけれど」
「……お太鼓に出した場所で、表情が随分変わるわね」
「そうそう、B面はまた全然表情が違うから、いく通りも楽しめるよ。着物の八掛けはこの色。きぬちゃん、好きだろう?」