奪取―[Berry's版]
 乱れた絹江の髪を、指先で梳き流し。喜多はベッドから腰を上げた。

「風呂は沸かしておいたから、使って。さっぱりするだろう。タオルもバスローブも置いてある。俺は、朝食を準備しておくから」

 喜多の突然の行動に戸惑いながらも、絹江は小さく頷く。背を向け、キッチンへ向かおうとする喜多を前に。ふと、思い出す。慌てて、絹江は喜多を呼び止めた。

「お世話になりっぱなしで申し訳ないんだけれど……ごめん、喜多くん。私、仮紐を忘れてきていたの。何か代わりになるもの、貸してもらえないかな?滑りが良くて、多少長さがあれば何でも良いんだけれど……」

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