奪取―[Berry's版]
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閉店間近のデパートで、絹江は紳士服売り場へ来ていた。当初の目的は、デパ地下のお惣菜だったはずなのだが。無意識に、足が向いてしまっていた。
初めて、ここへ足を運んだ目的は。他でもない、ネクタイであった。今朝、喜多から借りたネクタイは、やはりと言っていいだろう。みっともない皺がしっかりと刻み込まれていた。もちろん、クリーニングへ出してから喜多へ返すつもりで。その品は未だ絹江の手にある。しかし、だ。今回のことへ対するお礼とお詫びと言ってはあまりにもお粗末かもしれないが。新しいネクタイを、喜多へプレゼントしようと絹江は考えたのだ。
誰かを思いながら、プレゼントを選ぶ。相手は肉親でもなく、同性の友人でもない。久しぶりの感覚に。絹江は楽しく、心を弾ませながら。喜多を思い浮かべ、贈るネクタイを選んでいたのだった。
閉店間近のデパートで、絹江は紳士服売り場へ来ていた。当初の目的は、デパ地下のお惣菜だったはずなのだが。無意識に、足が向いてしまっていた。
初めて、ここへ足を運んだ目的は。他でもない、ネクタイであった。今朝、喜多から借りたネクタイは、やはりと言っていいだろう。みっともない皺がしっかりと刻み込まれていた。もちろん、クリーニングへ出してから喜多へ返すつもりで。その品は未だ絹江の手にある。しかし、だ。今回のことへ対するお礼とお詫びと言ってはあまりにもお粗末かもしれないが。新しいネクタイを、喜多へプレゼントしようと絹江は考えたのだ。
誰かを思いながら、プレゼントを選ぶ。相手は肉親でもなく、同性の友人でもない。久しぶりの感覚に。絹江は楽しく、心を弾ませながら。喜多を思い浮かべ、贈るネクタイを選んでいたのだった。