奪取―[Berry's版]
5.旧友
週末にあたる土曜日。着付け教室の勤務を終えた絹江は、喜多の住むマンションへ来ていた。広い空間の集合入り口ゲートに設置されているタッチパネルで、部屋番号を押す。気の抜けた電子音が鳴り、数秒遅れて。喜多の声が絹江の元へ届いた。
本日、絹江が訪ねることは、前日のうちに喜多へ伝えていた。当初は、また、どこかで夕食でも一緒にどうかと提案したのだが。終業時間の断言が、今の段階ではっきりと出来ないとの理由から、自宅で会おうという喜多の提案を、絹江は承知したのだ。
目の前の自動ドアが開き、絹江はマンション内へ足を踏み入れる。見覚えのあるコンシェルジュと会釈を交わしてから。エレベーターに乗った絹江は、最上階の数字が書かれているボタンを押した。
本日、絹江が訪ねることは、前日のうちに喜多へ伝えていた。当初は、また、どこかで夕食でも一緒にどうかと提案したのだが。終業時間の断言が、今の段階ではっきりと出来ないとの理由から、自宅で会おうという喜多の提案を、絹江は承知したのだ。
目の前の自動ドアが開き、絹江はマンション内へ足を踏み入れる。見覚えのあるコンシェルジュと会釈を交わしてから。エレベーターに乗った絹江は、最上階の数字が書かれているボタンを押した。