奪取―[Berry's版]
 知れば知るほど、着物の奥深さに、絹江は魅了されていった。次第に、友人と共に染物の勉強を始め、織屋巡りをし、着付けの資格も取得した。帯締めを自分で組む楽しみも知った。
 気が付けば、一年の大半を着物で過ごすようにもなっていたのだった。

 縞の塵除けを羽織り、絹江は家を出る。本日行われるお見合いの場所。とあるホテルのラウンジを目指して。

 今回のお見合いを持ってきたのは、他でもない。絹江の祖母だ。35歳を目前にしてもなお独身を貫く孫娘を心配してのことだった。祖母の頼みとあれば、無下には出来ないのが孫と言うものである。
 だが、正直なところ。絹江は結婚に興味がなかった。
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