奪取―[Berry's版]
別に気を遣わなくても良かったのに、と零してから。喜多が袋へと手を伸ばす。ガサリと音を立てながら、封を開けたところで。喜多の動きが止まる。
今度は、絹江が首を傾げる番である。
視線を手元から逸らすことなく、ゆっくりとした動作で。喜多は袋から、それら品物を取り出す。ひとつは、ビニール袋に入れられたネクタイ。もうひとつは、綺麗な包装紙に包まれた細長い箱だ。不意に、喜多の真剣な眸を向けられ、絹江は動揺のあまり口早に弁解を始めた。
「皺が付いてしまっていたの。借りたネクタイに。もちろん、クリーニングに出したから綺麗にはなっているわ。……だからと言うわけでもないけれど。先日の非礼とお礼の気持ちも兼ねて。喜多くんにプレゼント。私が選んでみました」
今度は、絹江が首を傾げる番である。
視線を手元から逸らすことなく、ゆっくりとした動作で。喜多は袋から、それら品物を取り出す。ひとつは、ビニール袋に入れられたネクタイ。もうひとつは、綺麗な包装紙に包まれた細長い箱だ。不意に、喜多の真剣な眸を向けられ、絹江は動揺のあまり口早に弁解を始めた。
「皺が付いてしまっていたの。借りたネクタイに。もちろん、クリーニングに出したから綺麗にはなっているわ。……だからと言うわけでもないけれど。先日の非礼とお礼の気持ちも兼ねて。喜多くんにプレゼント。私が選んでみました」