奪取―[Berry's版]
と言うよりも、男性に興味がなかった。だからと言って、女性に興味があるというわけではない。もっと具体的に、赤裸々に語るとするならば。男性と身体を重ねることに興味がない。とにかく、あの行為が億劫で仕方ないのだ。

 絹江が、初めて男性とそういった関係に至ったのは、大学生になってからだった。相手はひとつ年上の先輩。そのころは、絹江もまだまだ着物に興味を持ち始めたばかりのころで。洋服を着ていることも多かった。だが、とにかく先輩は絹江の和服姿を嫌った。脱がすのが面倒だと言うのだ。……頷ける理由ではある。しかし、絹江には、和服を脱ぐ――もしくは脱がされる過程よりもずっと。快楽を得るまでの行為そのものがずっと手間で、長いプロセスに感じてしまうのだ。

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