奪取―[Berry's版]
不安に駆られ、絹江は喜多へ手を伸ばす。その指先が、喜多へ触れる直前。大きな手が、それを遮った。次いで、包み込まれたそれは、強く握り締められる。
「喜多くん?」
「まったく。今日も見逃してあげようと思っていたのに……」
たった先ほどまで。ネジが外れたかのように笑っていた人物と同一なのかと疑いたくなるほど。喜多が向けてきた眼差しは鋭く、光を宿していた。真っ向から受け止めてしまった絹江は、逸らすことも出来ずに彼の眸を見つめる。沈黙が続く中、見つめ続けていた眸の中に。絹江は艶めいたものを感じ始めていた。不確かに揺れながらも、瞬間爆発的な大きさを見せる炎のようなそれ。背中を冷たい何かが伝ったときのように、絹江の身体が一瞬ふるりと震えた。
「喜多くん?」
「まったく。今日も見逃してあげようと思っていたのに……」
たった先ほどまで。ネジが外れたかのように笑っていた人物と同一なのかと疑いたくなるほど。喜多が向けてきた眼差しは鋭く、光を宿していた。真っ向から受け止めてしまった絹江は、逸らすことも出来ずに彼の眸を見つめる。沈黙が続く中、見つめ続けていた眸の中に。絹江は艶めいたものを感じ始めていた。不確かに揺れながらも、瞬間爆発的な大きさを見せる炎のようなそれ。背中を冷たい何かが伝ったときのように、絹江の身体が一瞬ふるりと震えた。