奪取―[Berry's版]
喜多に掴まれた手を、絹江は取り戻そうと必死になるが。更に力が加えられるだけで、喜多が手放そうとする気配はない。徐々に、絹江の胸に焦りが生まれる。唇を噛み、絹江は不快感を顕に喜多を睨む。だが、絹江の表面上の態度など、喜多にとっては痛くも痒くもないのだろう。口角を上げ、余裕の笑みを浮かべているのだから。
「喜多くん、離して。ネクタイが気に入らなかったのなら、返してもらって構わないから」
「それは出来ない」
台詞を言い終わると同時に、喜多がソファーから腰を上げた。依然として、手を握られたままである絹江も、引きずられるように共に立ち上がることになる。自分の意思とは関係ない動きに、バランスを崩している絹江を、喜多は突然抱き上げた。
「喜多くん、離して。ネクタイが気に入らなかったのなら、返してもらって構わないから」
「それは出来ない」
台詞を言い終わると同時に、喜多がソファーから腰を上げた。依然として、手を握られたままである絹江も、引きずられるように共に立ち上がることになる。自分の意思とは関係ない動きに、バランスを崩している絹江を、喜多は突然抱き上げた。