奪取―[Berry's版]
「きぬちゃんは、無防備すぎる」
「何言ってるのよ。友達に無防備で当たり前でしょう?冗談はやめて」
「男にネクタイを贈る。この意味、知ってる?」

 絹江は小さく首を振る。僅かに震える唇から漏れる、「知らない」の言葉と一緒に。再び、喜多の唇が弧を描いた。
 ゆっくりと絹江の唇と重なる。
 僅かな間触れた後、小さなリップ音を立て離れてゆく。
 与えられた衝撃で、脳がショートしてしまったかのように。絹江の頭が一瞬で真っ白になる。未だに、唇が触れるか触れないかの距離で。喜多は口を開く。

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