奪取―[Berry's版]
7.夢中
 喜多の唇が、首筋を伝う。舌先を尖らせて、微妙に感じる強弱。時折、ワザと歯を立てて。刺激に反応し、絹江の身体がふるりと震えた。久しぶりに与えられる、快楽を引き出す行為に、絹江は浮遊感を感じる。戸惑いすら覚えた。判断力が鈍ってゆく頭で、絹江は必死に探っていた。10年以上も前の記憶だ。自身の中にある、今までの経験が積もって形を成した山。その奥底に、今まで一度も掘り起こすこともなかったモノを探る。最後に、他人と肌を重ねた行為のことを。

< 69 / 253 >

この作品をシェア

pagetop