奪取―[Berry's版]
 男性に貫かれ、得られる快楽が嫌いなわけではない。むしろ相手を直接感じ、好ましくも思う。だが、その前のプロセスに魅力を感じないのだ。一瞬の快楽を得るために、互いの気分を高めるために費やされる1時間や2時間。それが、絹江には無駄な時間にしか思えない。数えるほどの経験しかない絹江は、意識を飛ばしてしまうほど強烈な快楽を感じたことはない。だからなのだろうかと悩んだこともあったが。それでも、快楽>プロセスまでの答えにたどり着くことは出来なかった。
 結局は面倒なのだ。

 最終的に。絹江はその先輩から別れを告げられた。仕方のないことだと、絹江は納得した。遠まわしに、性行為を避けてきた絹江に、先輩はそれでも根気良く付き合ってくれていたとすら思う。20代前半の男性と言えば、まだヤリタイ盛りだろう。浮気もしなかったことには、感謝すら覚えるほどだ。
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