奪取―[Berry's版]
 沈黙がふたりを包む。喜多の眸は真剣なものだ。まっすぐと向けられたそれを、祖父は受け止める。彼の思いも理解しながら。
 腕を組みなおした祖父が、時間を掛けて口を開く。

「喜多、それは探せない」
「どうして?お願いだよ、じいちゃん」
「傍に居るときに、真っ直ぐ思いを伝えられなかったお前が悪いんだ。過ぎてしまった時間は戻せない。それに、今彼女に会ったところで、その子はお前に靡かないだろう」
「そんなのわからないじゃないか!」
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