猫とつかの間
第1章 僕と猫。

道端にて、10年前

その夏、何回繰り返してきたかも分からないぐらいのとある夏。
僕は1匹の子猫に出会った。

段ボールに入れられたそいつは、かつて他の猫といたであろう中の最後の1匹となっていた。

身体はとても小さく、衰弱しきっていたそいつを僕は抱え込むと、何を思ったのだろうか自宅の自分の部屋で飼うことに決めた。

こんなとき、親がいたら反論の1つやふたつは返ってくるのだろう。

しかし、僕には親という存在は最初からいなかった。

家族の暖かさを知らない存在のこいつに、僕は自分の姿を重ね合わせていた。
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