善いヴィッチ
ようやく作業が終わったその日。

「あ」

先程まで快晴だった天気が急変してきた。

見上げた氷室さんの眼鏡のレンズに、雨粒が一滴落ちる。

「急いで帰った方がいいかしら」

「そうだな」

慌てて帰り支度を済ませ、僕と氷室さんは学校を出る。

校門を出た所で。

「あれ」

僕は右に、氷室さんは左に向かって歩き出す。

確か、氷室さんも僕と同じ帰り道だった筈だけど…。

「買い物、して帰らないといけないの」

氷室さんは言う。

「晩ご飯のおかず…それから弟達の明日のお弁当…」

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