善いヴィッチ
あらかじめ氷室家の夕食のメニューが決まっていた分、買い物は早かった。

レジで会計を済ませ、袋に品物を詰めていると。

「あ、そうだ」

氷室さんはスカートのポケットから何か取り出す。

「買い物手伝ってくれたお礼…飴ちゃんあげるね」

そう言って出したのは、お婆ちゃんがよく食べているような黒糖飴。

黒糖飴って…。

「ん?」

ニッコリ笑う氷室さんに、嫌な顔など向けられない。

引き攣った笑みを浮かべ、僕は飴を受け取る。

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