善いヴィッチ
氷室家に着く頃には、もう制服はビショビショだった。

「荷物、ここに置くね」

玄関に入ってすぐ買い物袋を置く。

「うん、ありがとうね、何から何まで」

微笑む氷室さんに笑顔を返し。

「じゃあ、また明日」

踵を返そうとした僕は。

「!」

彼女に制服の袖を摑まれる。

「?……氷室さん?」

「…弟達、今日は塾だったみたい。晩ご飯の準備ゆっくりでいいの」

そう言って微笑む氷室さんの表情は、先程までとは打って変わって妖艶だった。

「『びしょ濡れになるから』一旦ウチで雨宿りした方がいいって…言ったよね…?」

そう言って、僕の目の前で制服のスカートをストンと下ろす氷室さん。

「び、びしょ濡れって…『そっち』の事…?」

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