善いヴィッチ
「嘘つけ、胸に視線が集中してんのわかんだよ」

背中までの長い茶髪を掻き揚げながら、里奈さんはニシシと笑みを浮かべた。

「何見てんだ早漏野郎!触らせてやろうか?」

「そ…!」

「当たりかよ!なんか早そうだもんな保科は!」

大きな声で言うものだから、一緒に飲みに来ていた他の友人達にまで大笑いされる。

「いいぜ?ヤッてやるよ、いつでもゴム入ってるし」

そう言って自分の鞄をヒョイと持ち上げてみせる里奈さん。

「な、何言ってるんですか…酔ってるんですか?里奈さん…」

目を逸らし、僕は汗ダラダラだ。

狼狽した拍子に。

「あ!」

グラスを引っ繰り返して床に落とし、割ってしまう。

更には動揺したせいで。

「いつっ!」

割れた破片で指を切った。

いいとこ無しだ。

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