病原侵食
電話に出たその女の声は、意外なほどに朗らかで明るかった。

流石に無言電話に長時間付き合う気はないのか、すぐに切れてしまったけど。





私が更に悔しくなったのは、その女が何事にも動じていないかのように、普通に電話に出ていたから。



……この女に、一泡ふかせたい。「アンタの旦那は、私と一緒になりたいと言ってくれているの。だからアンタは身を引きなさいよ」そう言って、まだ見ぬこの女が絶望するところを見たかった。



だから。



自分でも嫌がらせだとは理解している。


それでも、もう私は自分を止められなかった。



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