病原侵食
二人で入ったのは、小さなイタリアン・レストラン。


食事を注文し終えると、話題が仕事の事からお互いのパートナーの話に移っていった。


私は今の会社に入ってから、付き合っている異性はいない。


……だって、あなたがいるから。


一目惚れだったんだろうと思う。


あなたは既に既婚者だったけれども、それでも私の目が他の男性に向くことはなかった。


でも、そんな重たい話なんか言えるわけがない。


当たり障りのない返答で、あなたからの質問を逸らしておいたの。



……あなたの方は?


奥さんの話はほとんど会社ではしないけど、仲が良いのかな?


………付け入る隙もないの、だろうか?


「私の事ばかり聞いてきますけど、佐藤係長はどうなんですか?奥さんとは今でも仲が良いんですか?」



返ってきたのは痛いほどの沈黙と、なぜか疲れたようなあなたの溜め息。


地雷だったのかな?



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