シアワセの答え
私は松葉杖を両手で抱え、痛みを我慢して駆け足で家に入ると、きのう用意した荷物を持ち、家を出ようとしたらあの男の人と母が入ってきた。
私はその横を通り出ようとした時、
「愛生!どこ行くのよ!」
「どこって…前田さんの家です。今までありがとうございました。」
「愛生っ!」
母が呼び止めるのも無視して私は走って家を出た。
どうして?どうして呼び止めるの?
私が邪魔だったんでしょ?
もう、あの家に戻ることは無い。
あの家に思い出なんて無い。辛い事ばっかだったはずなのに…
「うぅ…っ、なんで…、なんで涙なんて…っ」
もう枯れ果てたはずの涙が止めどなく溢れ出した。
最後に一回だけ、ごめんなさい、一回だけ言わせてください。
「ママ…っ!」
幸せだったあの頃、そう呼ぶことがどれだけ幸せなことなのか私は分かってなかった。