吸血鬼は淫らな舞台を見る
「なにしやがる!」
男はすぐに立ち上がったが、衝撃で割れた磨りガラスに手をついて切ってしまい、瑠諏を睨んだ。
顔は村尾邦一に間違いなかった。
「7年前に原恵美子という若い女の人を殺しましたね」
瑠諏が壁に当たって跳ね返ってきたドアを手のひらでもう一度壁に叩きつけるとドアが真っ二つに折れた。
「お、おまえ……」
尋常じゃない力を見せ付けられた村尾は途中で言葉を失った。
「こんな小さな町だと吸血鬼を見るのは初めてですか?」
村尾の血がついたガラス片を瑠諏は拾い上げ、まじまじと見てから乱杭歯を唇からはみ出し、部屋へと入っていく。