吸血鬼は淫らな舞台を見る


 翌日の朝、サトウと瑠諏はKLT銀行の裏手に呼ばれ、ひび割れたアスファルト面を保護するために敷かれている鉄板を見下ろしていた。


「かなりの量ですね」


「ああ」


 鉄板の上には赤い水たまりが浮いていた。


 僅かな歪みにたまっているだけでそれほど深さはないが、半径1メートルくらいの赤い水たまりは、トラックなどの大型車が傍の道路を通るたびに波紋を刻む。


 鑑識課の安本が赤い液体を綿棒で採取し、ルミノールというラベルが貼った小瓶からスポイトで試薬を吸い取った。


 綿棒の先に試薬を垂らしてオレンジ色の保護メガネをかけて発光具合を調べる。
< 145 / 421 >

この作品をシェア

pagetop